映画レビュー

【バッド・ジーニアス 危険な天才たち】カンニングを極限の心理戦に変えた異色サスペンス

映画『バッド・ジーニアス 危険な天才たち(2017年製作の映画)』感想(★★★★)

※この記事は作品のネタバレを含みます。

カンニングというテーマをここまで緊張感のある物語に仕上げた作品は珍しい。
静かな試験会場を舞台にしながらも、登場人物たちの表情や動きから極限の緊張感が伝わってくる映画だった。

作品情報

タイトル:バッド・ジーニアス 危険な天才たち
ジャンル:サスペンス/青春ドラマ
主演:チュティモン・ジョンジャルーンスックジン

感想

本作の最大の魅力は、カンニングという題材をサスペンスとして成立させている点だ。

舞台の多くは静かな試験会場で、派手なアクションや大きな事件は起きない。
それにもかかわらず、バレないように解答を伝える役者たちの汗や焦りの表情から、凄まじい緊張感が伝わってくる。

台詞に頼らずとも状況が理解できる演出は非常に巧みで、観ている側も思わず息を詰めてしまう。

カンニングの手法も非常にユニークだった。
前半の試験ではピアノを弾くような指の動きで解答を伝えるなど、常人では思いつかないアイデアが次々に登場する。

後半では、鉛筆のバーコードを解答として印刷するという大胆な方法が登場し、その発想力には驚かされた。

印象に残ったポイント

物語後半の国際試験のシーンは特に緊張感が高い。

各国で試験時間に時差があることを利用し、海外にいるリンとバンクが解答を半分ずつ記憶する。
そして休憩時間にトイレへ駆け込み、隠していたスマートフォンでタイの学生に解答を送信するという計画だ。

この大胆な作戦が進むにつれて、いつバレるのか分からない緊張感が極限まで高まっていく。

監督官が長いトイレ滞在を怪しみ始め、問い詰める場面では思わず手に汗握る展開になっていた。
「ここまで来て失敗するのではないか」という不安が一気に高まる場面だった。

また、物語の中で変化していくリンとバンクの対比も印象的だ。

最初はリンよりもバンクの方が真面目な人物に見える。
しかし物語が進むにつれて、リンは徐々に改心し、バンクは金に取り憑かれていく。

同じ天才でも、進む方向が真逆になっていく構図が非常に印象的だった。

総評

物語の終盤では、バンクは逮捕されるが、大金の味を知った彼は懲りる様子がない。
むしろリンを再び計画に誘う姿からは、完全に悪の側へ踏み込んだ人物の顔が見える。

一方でリンはその誘いをきっぱりと断る。
「大金は価値がない」と言い、不正を告白する道を選ぶ姿は非常に清々しい。

リンの父親の存在も印象的だった。
娘が罪を告白する決断をしても責めることなく、「一緒に乗り越えていこう」と声をかける。

もしバンクの周囲にも同じような存在がいたなら、彼の人生も変わっていたのかもしれないと考えさせられる場面だった。

カンニングという題材をここまでスリリングな映画に昇華した点は見事。
サスペンスとしての緊張感と、人間の欲望や変化を描いたドラマが融合した印象的な作品だった。

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